遺産分割について知っておくべきこと-調停と審判-

遺産分割がもめてしまったらどうなるか――制度は2つ 家庭裁判所にて、まず調停、こじれたら審判に移行――

 家庭内でもめ事が起きた時、家庭裁判所において解決を図る制度が2つあります。「調停」と「審判」がそれです。遺産相続を巡って遺族間でもめて調停や審判に至るケースは年1万5千件にも上ると言われます。いざというときに備え、それぞれの仕組みを見てゆきましょう。

 相続の際に遺言が残っていない場合、法定相続人全員で話し合い遺産の分け方を決める必要があります。しかし、この遺産分割協議は容易にはまとまらず、こじれて裁判所に解決を求めざるを得なくなる例が絶えません。

 ただし、通常の訴訟では、公開された法廷で肉親同士が争うことになり、対立に拍車がかかる恐れがあります。そこで活用される制度が調停と審判です。どちらも手続きは非公開です。

 調停は、裁判所が間に入り、当事者間での話し合いによる解決を促す仕組みです。裁判官または家事調停官(弁護士歴5年以上)と国民から選ばれた2人以上の家事調停委員で委員会を構成します。

 家庭裁判所の一室で双方から言い分を聞きながら、助言をして合意点を探ります。話し合いがまとまれば、調停調書を作成します。調停調書には、裁判の判決と同様の効力があります。調停は、1年ほど続くことが多いようです。

 一方、審判は裁判の一種です。裁判官が、書類や証拠を基に決定(審判)を下します。話し合いの仕方に結果が左右される調停とは違い、審判では、あくまでも法律に沿った決着となります。

 通常、まずは調停から入り、解決しない場合に審判の手続きに移ります。

 遺産分割を巡っては、1年間に調停がおよそ1万3千件、審判が2千件起きていると言われます。

 ケースを参考に、具体的に、調停と審判ではどのような違いが出るかを見ていきましょう。

ケース Aさん(長男)、母、弟が法定相続人、父が遺言なしで死亡(相続財産は預金3000万円)

 法定相続割合の通りに分割するとすれば、母が2分の1(1500万円)、Aさんと弟がそれぞれ4分の1(750万円)ずつを受け取る事になります。

ところが、Aさんが父から生前、住宅購入資金1000万円の贈与を受け取っており、弟に不満があった場合、どのようになるでしょうか。

この場合、話し合って弟が納得すれば問題はありません。母の世話はAさんが責任を持つから、などと説得する手もあります。弟が納得できず、家裁に調停を申し立てたとしても、Aさんにとって必ずしも不利な結果になるとは限りません。調停を重ねるなかで弟が矛を収める可能性があります。

しかし、審判に持ち込まれた場合、結果は明白です。民法では、このケースのように多額の生前贈与について、公平の観点から、相続時に考慮すべきだと定められているからです。特別受益者の相続分(民法903条)として、相続分に修正が加えられます。

 この特別受益の考え方に基づくと、審判で下される遺産分割は次のようになります。

まず、預貯金に生前贈与額を加え、合計4000万円を分割対象財産とみなします。

 これの4分の1、1000万円ずつが、兄と弟それぞれの持ち分です(母は2分の1で、2000万)。ただし、Aさんの場合は、生前贈与でもらった1000万円分が対象から除かれます。このため、実際の受け取り分はゼロになります。

 審判の手続きに至れば、Aさんは確実に不利です。家庭裁判所では調停から始まるのが通常なので、Aさんとしては、調停を通じて弟をいかにして説得できるかがポイントになります。

 

 

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